朝日新聞に、
asahi.com(朝日新聞社):「ネット全履歴もとに広告」総務省容認 課題は流出対策 – ビジネス・経済
という記事が掲載されていました。
ディープ・パケット・インスペクション(DPI)とは、簡単にいえばプロバイダ側でパケットを盗聴して、どんな通信が行われているかを検査・記録する仕組みです。
代表的な利用法として、例えばWinnyなどP2P通信だけを制御(遮断)したい場合などにこのDPIが使われていますし、最近話題の児童ポルノ等の通信遮断のためにDNSポイズニング、ハイブリッドフィルタリングなどと併用して、通信遮断だけでなく悪質なユーザーの特定まで可能になるかもしれません。
以上は、犯罪を防止するために必要性を十分に感じる内容ですが、果たしてこれを広告までに活用する必要性があるのでしょうか?
例えば、一般家庭でパソコンを共有して使っている場合、お父さんやお母さんが見た(あるいは購入した)履歴から、子供に対してその商品がリコメンドされる可能性だって十分にあります。
これは、最新のWebブラウザでは標準機能となりつつあるシークレットモード(InPrivateブラウズ)機能を使ったとしても、上記の問題は解決することはできません。
(シークレットモードは、自分のPC内に履歴を残さないようにする機能です。DPIのようにプロバイダ側で履歴を記録されてしまうと、それを防ぐ手段はありません。)
このDPIを利用した行動ターゲティング広告に関しては、私は「現状の体制では認めるべきではない」と思います。
インターネット広告を出すことに従事したことがある人なら、誰だって「微妙なバランスの上で広告配信を行っている」ことは理解していると思います。(使える情報があるのなら、何でも使ってしまうはずです。)
それに、インターネットでどのサイトを訪れたか、あるいはどの商品を買ったかなどが漏洩したら、下手な名簿転売よりもタチが悪そうです。
行動ターゲティングは非常に有用な技術で今後も発展していくと思いますが、行きすぎると「気持ち悪い」と感じるようになってくるはずです。そのあたりをしっかり考えて、DPIに取り組んでもらいたいと思います。