興味深い記事がITproに掲載されていました。
学生とIT業界トップの公開対談で胸を衝かれたこと—IT産業を呪縛する“変われない日本”
発声練習 も併せて読まれると、記事の偏りがなくていいです。
情報処理推進機構(IPA)が企画した、IT業界のトップと、優秀と思われる学生との対談ですが(元の記事はこちら)、学生に教えている立場としていろいろ考えさせられました。
中でも、「天才プログラマのように技術を極めるのであればそれを生かす道に行くべきであって,企業に入って大型システムを開発するのはもったいないか向いてない」という趣旨の言葉は、実際、その通りだなと実感します。
直接クライアント企業と話す大手SIerに必要な能力は、コミュニケーション能力と、要件定義をしっかりと固める能力、あとは1次請け、2次請け、3次・・・と続く連鎖の中でいかに効率よくプロジェクトを遂行させるかという管理能力です。
それは、企業が大学教育に求める能力として、1位が「システム・ソフトウエア設計」,2位が「文章力」,3位が「チームワーク」を挙げておられることからも容易に想像がつきます。
では、ここで述べられていたように、能力がある学生にすぐに起業を勧められるかというと、これはこれで難しいものがあります。日本にはまだベンチャーを受け入れる土壌が整っていません。支援制度が足りなすぎるのです。
また意識面での改革も必要でしょう。「起業に失敗してもそのチャレンジ精神を大いに評価する」ということで、再雇用でもオファーが次々に来るような雰囲気にならなければ、大手企業からの内定を蹴ってまで起業しようとは決断できないことでしょう。
日本はまだ、「道から一歩外れた者」や「一度失敗した者」に対して、寛容な社会ではないのです。
学生は、それを敏感に感じ取っているようです。今、私が受け持っている学生でも、ほとんどが「安定した正社員」になることを希望しているようです。私はそれを適切な判断だと思うし、わざわざ大きなリスクを背負う起業への道を安易に勧めることはできません。
とはいえ、普段からITコンサルタントとして起業家や起業家の卵の皆さんと接していて感じるのは、皆さん「イキイキしているな」ということです。きっと、24時間ビジネスのことを考えたり、大変な重圧を感じていらっしゃる起業家の方もいると思いますが、皆さん生命力に溢れています。
私は、遊びたい盛りの学生に向かって、自分で仕事上でのやりがい(生き甲斐?)を見つけろと無理矢理説教するつもりはありませんが、「将来起業家になりたい」と言っている学生には、その前向きな気持ちを伸ばしてあげるようにしたいと考えています。