今やっている、将棋電王戦はご存じでしょうか?
私はこれが毎回楽しみで楽しみで仕方ありません。(このブログでも過去何回か将棋プログラムのことを書いてますが 笑)
自分が将棋好き小学生だったのと、中学からプログラマなので、余計に思い入れがあります。
今回の第3回将棋電王戦は5番勝負で、棋士はそれぞれ違うプログラムと対戦します。
将棋電王戦 HUMAN VS COMPUTER | ニコニコ動画
特に、第二局の佐藤紳哉六段vsやねうら王は、面白トークやカツラネタで笑わせてくれるサトシンさんの本職真面目将棋モードと、もう一方の「局後学習」機能に特徴があるやねうら王、どちらも色モノ対決(?)での楽しい将棋になりそう、と思っていたら、とんでもない展開に。
電王戦第2局「やねうら王」は旧バージョンで ドワンゴ川上会長「誤った判断だった」と特例撤回 – ねとらぼ
今回の騒動を簡単にまとめれば、
・プログラマが、対局中のフリーズ(完全停止)を含むバグを発見した。そのため、本番中でのフリーズを恐れた。(また運営側もそれを恐れた)
・結果、本来認めてはいけなかったデバッグを運営側が認め、やってみたら強くならないはずのソフトが強くなってしまった。
・ソフトの棋力が変わったことによって、佐藤六段の研究が無駄になった。結果佐藤六段が怒りモードへ。
・競技の結果、運営側・将棋連盟が強くなったソフトで戦うことを認めた。
・PVではプログラマ側が圧倒的に悪者になるように誇張表現され、プログラマが叩かれる展開になった。
・…が、結局元のソフトで戦うことになった。
ということです。(全然簡単じゃないですが)
いやぁ、動画の編集の怖さってすごいですね。
あのPVを見ただけでは、どう考えてもプログラマのやねうらお氏が一方的に悪いようにしか見えない。
そのため、やねうらお氏のブログは大炎上。というより将棋ファンからの袋叩き。
やねうらお-俺のやねうら王がこんなに弱いわけがない。 (第2期)
しかし、氏の弁解&反論(3/15のブログ)を良く読むと、プログラマならではの矜持も見えてきます。
自分のプログラムに欠陥(フリーズしたり、明らかに誤って算出された弱い手を打ったり)を発見して、それを運営側に伝え、いくつかのプランを伝えて、どうしましょうかと連絡しています。
(最初は元バージョンで戦い、フリーズしたときのみ新しいバージョンに差し替えて対戦プランなど)
まぁ、アレですね。大事な一大イベント、今回は大勢が閲覧する将棋イベント用プログラムですが、例えばこれが飛行機の制御プログラムとかで「1万フライトに1回はバグりますがいいですか?」と聞かれて、乗る人はいないですね。
(実際の飛行機は100万回フライトに1回墜落する程度の設計になっているそうです。)
結果、運営側も万が一に備えて、デバッグを認可したんだと思います。…が、結局その後のゴタゴタを殆ど(というか全部?)プログラマのせいにしてしまった。
興行的なリスクを恐れて自分達が作ったレギュレーションを自分達で破っておいて、それをプログラマに押しつけた恰好です。
対局前に運営から謝罪があったのには、そういう経緯があったのだろうと思います。
もちろん、プログラマとして、自分が作ったプログラムは息子・娘も同然で、バグを見つければ無料でも潰したくなるのは職業病のようなものですし、そのバグ発見の遅れ・バグ修正による想像以上の棋力アップによって運営側・棋士側に迷惑をかけたことについて謝罪されています。
また、佐藤六段側も同様に、棋士の矜持があります。
Aさんと戦うと思って棋譜を研究したりしていたら、いきなり直前にさらに強いBさんと戦うことになってた(しかも一大イベントで)、となったら、そりゃ怒りますね。
でも、棋士たるもの、相手が強くなったからと「じゃあ辞めます」と言えるわけもありません。全力で勝ちに行くつもりになっていたはずです。
ところが、またさらに直前にやっぱりAさんと戦ってもらいますとなってますから、モチベーションはガタガタになっていたはずです。
将棋は意外とメンタルな部分もあるので、今回は佐藤六段本来の力が出しにくい状況だったのではないかな、と思ってしまいます。
今回は、棋士・プログラマとも、お互いの矜持に従って、最高の力を出そうとして招いた悲劇だったと思いますが、皆さんの感想はいかがでしたでしょうか。
私の素直な感想は、運営のPVはちょっと一方的すぎて卑怯だと感じましたし、まだ運営側がこういった大会を仕切り慣れていなかったための騒動だったのではないかと感じています。今後回を重ねていくにしたがって、良い運営をされることを切に願っています。
追伸
堅い話になってごめんなさい。
最後に今回の電王戦のアイドル、「電王手くん」をご紹介します。
すごいぞ、デンソー!
きっちり、大橋流で並べます。
ちゃんとおじぎもします。(かわいい!)