私はセミナーの講師をやっている関係で、ボイストレーニングや、わかりやすい声で説明するにはどうしたらよいかに興味があります。
そのため、この手の本はいくつも読んでいるのですが、今回は「理系の私」に納得感が一番高かった本をご紹介します。
リヨン社(2008-03-11)
売り上げランキング: 83682
「声力トレーニング」の著者の島村武男さんはオペラ歌手として海外でも活躍され、現在は国内で大学教授やオペラ歌手として活躍されている、いわば声楽のプロです。
しかも、もともと音楽の専門家ではなく、国内・海外での修行の経験から努力して「良い声」を獲得されたことが、声の指導をする立場としての「わかりやすさ」にも繋がっていると思います。
理系の私が納得するポイントは、次の通り。
①声が出る構造(メカニズム)をきちんと説明していること。
②体のどの部分をどのように動かすのか、具体的に説明していること。
③なぜそのトレーニングを行う必要があるのか論理的に説明できること。
実のところ、①については何冊か本を読むことで、おおよそ理解できるようになります。
要は、元となる息を腹式呼吸で得ること、声帯を使ってコントロールすること、声(音の振動)を喉や口や鼻で増幅させること、これらを自分で意識的に(自律的に)ラクに行えるようになることが大切だってことです。これは、理屈でわかります。
でも、②や③をちゃんと説明している本は少ない。
特に③は、やたら恥ずかしい練習法が多く、しかもなぜそれをやる必要があるのか、説明されていない本が多いのです。
例えば、この本の中で、著者がドイツ人のオペラ歌手に説明する一節からご紹介すると、
①横隔膜は張っている
②息は時々鼻から吸う(ほどんどは口と鼻の両方で吸っているのですが…)
③息を流しながら声帯を振動させる
④声帯はなるべく下のほうで一定に保ちながら声を出す
⑤そのとき懸壅垂(俗にいうのどちんこ、口蓋垂とも呼びます)は、つねに上がっている
⑥その間ずっと張っている横隔膜は微妙に動いている
など、鏡を使ったり体に手を当てて確認できる、より具体的な説明です。
本書中盤では「よい声」を作るためのトレーニングが続きますが、実に論理的にトレーニングの必要性を説いてくれています。
「ああ、この筋肉は訓練して鍛えないとダメだなぁ」と思うと同時に、オペラ歌手がなぜあんな声を出せるのかその一旦を垣間見たような気がします。
とにかく納得感の高い本ですので、理系・文系問わず(笑)、オススメしますよ。